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HPVとは|感染経路・型・子宮頸がんとの関係を婦人科専門医が解説

最終更新日2026年8月13日

このページの要点(60秒でわかるHPV)

HPV(ヒトパピローマウイルス)とは、性的な接触によって皮膚や粘膜に感染する、約200種類の型をもつウイルスです。このうち「高リスク型」が排除されずに残ると、子宮頸がんの主な原因になります。

  • HPVには約200種類の型があり、がんに発展する可能性のある「高リスク型」と、がんに発展することはない「低リスク型」に分かれます。
  • 性的な経験がある人なら生涯で一度は必ずと言っていいほど感染する、ごく一般的なウイルスです。
  • 感染しても約90%は2年以内に自然に消えます。がんに進むのは、高リスク型が消えずに残ったごく一部の方です。
  • 血液中に入らないため自然に抗体ができず、一度排除できても再び感染する可能性があります。
  • 日本人女性では16型・18型に加えて52型・58型が多く、海外とは分布が異なります。
  • 細胞診で「異常なし」でも、高リスク型HPV陽性は将来の子宮頸がんの大きな危険因子です。

目次

  • 1. HPV(ヒトパピローマウイルス)とは?

  • 2. HPV感染が分かってもパートナーを責めてはいけない医学的理由

  • 3. 子宮頸がんとHPVとの関係

  • 4. 日本人女性のHPV型の特徴

  • 5. HPV検査の有用性

  • 6. HPV検査の料金

  • 7. よくあるご質問

  • 8. 参考文献 / 執筆・監修

1. HPV(ヒトパピローマウイルス)とは

HPVは「ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus)」の略称で、子宮頸がんの主な原因となるウイルスです。「ヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス」とも呼ばれています。

現在、HPVには約200種類の型が存在することがわかっており、それぞれに番号が付けられています。

HPVの型別分類(高リスク型・低リスク型)

約200種類あるHPVは、がんに発展するリスクの有無によって、大きく以下の2つに分類されます。

分類

特徴

該当する主なHPV型

高リスク型

がんに発展する可能性のある型

16型, 18型, 31型, 33型, 35型, 39型, 45型, 51型, 52型, 56型, 58型, 59型, 68型

低リスク型

がんに発展することはない型

6型, 11型, 41型, 42型, 43型, 44型

HPVの感染経路と「再感染」のリスクについて

HPVは主に性行為を介して感染します。ウイルスは皮膚の粘膜や子宮頸部にとどまるため、血液中には入らないという特徴があります。このメカニズムにより、以下のような注意点があります。

  • 自然に抗体が作られない:血液中に入らないため、感染防御の要である「液性免疫」に記憶されることがなく、自然に抗体が生成されることはありません。

  • 何度でも再感染する可能性がある:免疫が記憶されないため、自身の力で一度HPVを排除できた場合でも、再び感染(再感染)する可能性があります。

HPVに感染しても、約90%は2年以内に陰性化します

HPV感染はめずらしいことではなく、多くは免疫の働きによって自然に検出されなくなります。一般に、約70%は1年以内、約90%は2年以内に陰性化するとされています。

注意が必要なのは、高リスク型HPVが長く残る「持続感染」です。一部では数年から十数年をかけて、子宮頸部異形成を経て子宮頸がんに進行することがあります。

ただし、「HPV陽性=がん」ではありません。感染が一時的か持続しているかを確認するため、定期的に検査を受けることが大切です。

【出典】
日本産婦人科感染症学会誌 Vol.9 No.1(2025)
国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん検診について」

2. HPV感染が分かってもパートナーを責めてはいけない医学的理由

医学専門誌 Sexually Transmitted Infections に掲載された論文(Waller et al., 2007)などでは、HPVの感染経路が「性的な接触」であるという事実だけが強調されることで、患者に不必要な「恥(shame)」や「汚名(stigma)」を着せてしまう社会的リスクが指摘されています。

☝️しかし、以下の3つの科学的データを知れば、誰かを責めること自体に意味がないことが分かります。

① 一生のうち80%以上の人が感染する(米CDC等の生涯確率データ)

HPVは特別な人だけが感染するウイルスではありません。性的な接触の経験がある人では、生涯に80%以上がHPVに感染すると推定されており、CDCも「ほぼすべての人が一生のうち一度は感染する」としています。

そのため、HPVが見つかったこと自体を、どちらか一方のパートナーの行動に結びつけて考えるのは適切ではありません。 HPVは非常にありふれた感染症であり、性交経験が1人だけでも感染する可能性があります。

※ CDC:米国の感染症対策や公衆衛生を担う政府機関

参考文献

  • Chesson HW, et al. Sex Transm Dis. 2014;41:660-664.
  • CDC. About HPV / Genital HPV Infection.
HPV感染の自然経過―何年も経って再び陽性になることがあります

HPV感染の多くは1~2年以内に検査で検出されなくなりますが、ウイルスが完全に消失したとは限らず、検出できない状態で残り、何年も経ってから再び陽性になることがあります

そのため、「今回HPVが陽性だった=現在のパートナーから最近感染した」と判断することはできません。 HPV検査だけでは、感染した時期や相手を特定することは医学的にできないため、陽性という結果だけを理由にパートナーを責めることは適切ではありません。

参考文献

  • Ho GYF, et al. N Engl J Med. 1998;338:423-428.
  • Gravitt PE, Winer RL. Viruses. 2017;9:267.
  • CDC. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines: HPV Infection.
③ コンドームでも100%は防げない

HPVは主に皮膚や粘膜の直接的な接触によって感染するため、コンドームを正しく使用していても、外陰部や陰茎の根元などコンドームで覆われない部分の接触から感染する可能性があります。コンドームはHPV感染のリスクを下げますが、完全に防ぐことはできません。

そのため、コンドームをきちんと使用していたのにHPVに感染したとしても、誰の落ち度でもありません。

参考文献

  • Winer RL, et al. N Engl J Med. 2006;354:2645-2654.
  • CDC. STI Treatment Guidelines: HPV Infection.
そもそもHPVは「性病」なのでしょうか

HPVは性的な接触で感染しますが、いわゆる「性病」として特別視すべきウイルスではありません。

誰が悪いという話ではなく、性経験のある人なら誰もが通り得る、ごくありふれた感染です。パートナーを責めないでください。大切なのは、感染したかどうかではなく、消えずに残っていないかを定期的に確かめることです。

3. 子宮頸がんとHPVとの関係
- 子宮頸がんの原因が解明されました-

1983年、ツアハウゼン博士らは子宮頸がん組織においてHPV16型が高頻度で存在することを報告しました。

その後、分子生物学の急速な進展により、子宮頸がん予防を目的としたHPVワクチンが開発されました。この功績が評価され、ツアハウゼン博士は2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

HPVワクチンの有効性について詳しくはこちら

HPVキャッチアップ接種について詳しくはこちら

論文1:子宮頸がんの90.7%からHPVが検出された

子宮頚がん患者1918例のうち、90.7%にがん組織の中からHPVが検出されたという論文。

子宮頚がん患者1918例のうち、90.7%にがん組織の中からHPVが検出されたという論文。

☝️この結果から分かること】子宮頸がんの主な原因はHPV感染であると考えられます。

論文2:細胞診が正常でも、高リスク型HPV陽性なら将来のリスクは高い

細胞診(子宮頸がんの一般的な検査)で「異常なし」と診断された1,622人を数年間追跡した研究で、高リスク型のHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染していると、将来がん化するリスクが高くなることが分かりました。

細胞診(子宮頸がんの一般的な検査)で「異常なし」と診断された1,622人を数年間追跡した研究で、高リスク型のHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染していると、将来がん化するリスクが高くなることが分かりました。

グループ

対象人数

高度異形成・上皮内がんに進行した割合

高リスク型HPVに感染していた人

86人

6例(7%)

HPVに感染していなかった人

1,536人

1例(0.07%)

☝️この結果から分かること】たとえ細胞診の検査で「正常」であっても、高リスク型のHPVに感染していることは、将来の子宮頸がんにつながる「大きな危険因子」であると言えます。

4. 日本人女性のHPV型の特徴

子宮頸がんから検出されたHPV型

日本人女性の子宮頸がんから検出されたHPV型の割合を示す棒グラフ。16型・18型・52型・58型で全体の72.5%を占める。

Miura S, et al. Int J Cancer. 2006;119(11):2713-5.

  • 日本人女性の子宮頸がんから検出されたHPV型(海外との比較)

     HPV         

    日本   

    海外   

    16型

    44.8%

    54.3%

    18型

    14%

    17.2%

    52型

    7%

    2.8%

    58型

    6.7%

    2.3%

    上位4型 合計

    72.5%

    76.6%

▶️ 日本=Miura S, et al. Int J Cancer. 2006;119(11):2713-5.

▶️ 海外=Muñoz N, et al. Against which human papillomavirus types shall we vaccinate and screen? The international perspective. Int J Cancer. 2004;111(2):278-285.

☝️海外との違い(日本ならではの特徴)

16型は海外の約54.3%に対し日本では44.8%とやや少なく、逆に52型・58型は、海外ではそれぞれ2.8・2.3%にとどまるのに対し、日本では7%・6.7%と高い割合で検出されるのが大きな特徴です。

子宮頸がん検査「異常なし」で検出されたHPV型
(当院院長が参加した臨床研究)

子宮頸がん検査で異常のなかった日本人女性3,047名のHPV型別感染率を示すグラフ。52型が最も多い。

Toshiyuki Sasagawa, Toshiyuki Maehama, Kazuhisa Ideta, Takuya Irie, Fujiko Itoh  J-HERS Study Group. J Med Virol. 2016 Nov;88(11):1989-96.

☝️子宮頸がん検査に異常なくてもHPVが検出されることはあります。

16歳から50歳の日本人女性6,628名のうち、子宮頸がん検査で異常のなかった3,047名を調べたところ、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染に次のような日本人特有の傾向がありました。

  • 世界で多い「18型」が日本では少ない: 世界的に子宮頸がんの主な原因とされる「HPV-18型」ですが、日本では比較的少ないことが判明しました。

  • 日本では「52型」が最も多い: 一方で、日本では「HPV-52型」の感染率が最も高く、これは日本ならではの傾向といえます。

HPV型別検査でわかること

現在、どの型のHPVに感染しているかを簡単な検査(HPV型別検査)で調べることが可能となりました。 感染している型が分かれば、今後子宮頸がんへ移行しやすいのかどうか調べることが出来ます。

☝️HPV16/18/31/33/35/52/58の7つの型は、他の型と比べて進行のリスクが高いと言われています。

また、子宮頸がんには扁平上皮癌(約8割)と腺癌(約2割)があり、感染しているHPV型が異なる傾向にあります。扁平上皮癌ではHPV16型の感染が、腺癌ではHPV18型の感染が多く検出されています。

5. HPV検査の有用性

その1:ASC-USの「振り分け」に役立つ

子宮頸がん細胞診において「細胞異型」が軽度な場合はASC-USと判定され、「腫瘍性病変」で精密検査を実施するか、「非腫瘍性病変」で経過観察をするか、判断に迷う場合があります。

☝️両者は細胞診のみでは鑑別が困難なことがあるため、仕分けのためにHPV検査が有用となります。

HPV検査の結果 

その後の対応

HPV検査(+)

腫瘍性病変と考え → 精密検査(組織診)をします。

HPV検査(-)

非腫瘍性病変と考え → 1年間経過観察(1年後再検査)とします。

その2:異形成が進むか消えるかを推測できる

☝️HPV検査を用いることで(特にHPV型別判定を用いることで)、異形成が進展して行くのか、消退して行くのかをある程度推測することができます。

現在の状態

HPV16,18,31,33,35,52,58のいずれかが陽性

それ以外

軽度異形成が5年以内に高度異形成に進展するリスク

16.6%

3.3%

中等度異形成が5年以内に高度異形成に進展するリスク

40.5%

8.3%

( Int J Cancer 2013 :132: 327-334 Hosaka M, et al ) ( Cancer Lett 2003 :192: 171-179 Yokoyama M, et al )

 

▶️軽度異形成/中等度異形成で高リスク型HPV検査(-)を1.0倍とした場合

HPVの型         

高度異形成・上皮内癌への進展リスク

HPV16型(+)

11.1倍高くなります

HPV18型(+)

14.1倍高くなります

( Int J Cancer 2011 :128(12):2898-2910 Matsumoto K et al )

6. HPV検査の料金(自費 税込)

HPV検査:

16型、18型とその他のハイリスク型のどれかに感染しているかを検出

9,500円

HPV型別検査:

16型、18型も含め、ほぼすべてのハイリスク型を検出

16,000円 

初診料 1,800円 / 結果・再診料 1,000円 

7. HPVについてよくあるご質問

Q1. HPVは性病(性感染症)ですか?

HPVは性的な接触(皮膚や粘膜の直接的な擦れ合い)で感染しますが、いわゆる「性病」として特別視すべきものではありません。性的な経験がある人なら生涯で一度は必ずと言っていいほど感染する、ごく一般的なウイルスです。

Q2. HPVに感染したら、必ず子宮頸がんになりますか?

なりません。感染しても約90%は2年以内に自然に消えます。高リスク型が排除されずに残った(持続感染した)ごく一部の方が、数年から十数年をかけて前がん病変を経て子宮頸がんに進むことがあります。

Q3. HPV陽性でした。パートナーが原因ですか?

特定できません。HPVは感染してから何年も、時には10年以上も体内に潜伏することがあるため、「今検査で陽性が出たからといって、今のパートナーから移されたとは限らない」のです。過去のどの時点の接触で感染したかを特定することは科学的に不可能です。

Q4. 一度HPVが消えたら、もう感染しませんか?

再び感染する可能性があります。HPVは血液中に入らないため、感染防御の要である「液性免疫」に記憶されることがなく、自然に抗体が生成されることはありません。そのため、自身の力で一度HPVを排除できた場合でも、再び感染することがあります。

Q5. コンドームを使えばHPVは予防できますか?

100%は防げません。体液ではなく「皮膚や粘膜の直接の擦れ合い」で感染するため、コンドームで覆いきれない部分(外陰部や根元など)の接触だけでも感染リスクがあります。避妊を徹底していても防げないため、誰の落ち度でもありません。

Q6. 「HPV検査」と「HPV型別検査」は何が違いますか?

HPV検査は、16型、18型とその他のハイリスク型のどれかに感染しているかを検出する検査です(9,500円)。HPV型別検査は、16型、18型も含め、ほぼすべてのハイリスク型を検出します(16,000円)。感染している型が分かれば、今後子宮頸がんへ移行しやすいのかどうか調べることが出来ます。

Q7. 日本人に多いHPVの型は何型ですか?

日本人女性の子宮頸がんの主な原因は「16型」と「18型」で、これに「52型」と「58型」を加えた4つのタイプで全体の72.5%を占めます。また、細胞の検査で「異常なし」だった日本人女性3,047人を調べた研究では、日本では「HPV-52型」の感染率が最も高いことが分かっています。

Q8. すでにHPVに感染していても、ワクチンを打つ意味はありますか?

はい、あります。HPVワクチンは、すでに感染している型を治療したり排除したりするものではありません。しかし、すべての型に感染しているとは限らないため、未感染の型への新たな感染や再感染を防ぐ効果が期待できます。接種後も定期的な子宮頸がん検診は必要です。

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8.参考文献 / 執筆・監修

  • Muñoz N, et al. Epidemiologic classification of human papillomavirus types associated with cervical cancer. N Engl J Med. 2003;348(6):518-27.

  • Rozendaal L, et al. PCR-based high-risk HPV test in cervical cancer screening gives objective risk assessment of women with cytomorphologically normal cervical smears. Int J Cancer. 1996;68(6):766-9.

  • Miura S, Matsumoto K, Oki A, Satoh T, Tsunoda H, Yasugi T, et al. Do we need a different strategy for HPV screening and vaccination in East Asia? Int J Cancer. 2006;119(11):2713-5.

  • Sasagawa T, Maehama T, Ideta K, Irie T, Itoh F; J-HERS Study Group. J Med Virol. 2016;88(11):1989-96.(当院院長が共著者として参加)

  • Hosaka M, et al. Int J Cancer. 2013;132:327-334.

  • Yokoyama M, et al. Cancer Lett. 2003;192:171-179.

  • Matsumoto K, et al. Int J Cancer. 2011;128(12):2898-2910.

  • Waller J, et al. Sexually Transmitted Infections. 2007.

  • 日本産婦人科感染症学会誌 Vol.9(2025)3-11「ヒトパピローマウイルス(HPV)の生活環」

この記事の執筆・監修

入江 琢也   

アイレディースクリニック新横浜 院長

医学博士(慶應義塾大学)/日本産科婦人科学会 専門医/日本臨床細胞学会 細胞診専門医

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