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子宮頸部異形成とは — がんとの違いから治療の考え方までわかりやすく解説

最終更新日2026年8月30日

「子宮頸部異形成」と言われても、これはがんではありません。 正常な細胞とがん細胞の中間にあたる状態で、多くは自然に元へ戻ります。がんとの違いから検査・治療の考え方まで、図解でわかりやすく説明します。

この記事でわかること

  • 原因はHPV感染で、多くは自然に消えること               

  • 軽度・中等度・高度(CIN1〜3)の違いと見通し

  • 検査から診断までの流れ

  • 経過観察と治療、どちらが必要かの目安

1. 子宮頸部異形成とは — がんとの違いをまず知る

子宮頸部異形成とは、子宮頸部の粘膜をつくる細胞の「形」が、正常な形から変化した状態のことです。

「異形成」という漢字は、文字通り「異なる形に成る」という意味で、細胞ががん化する手前の変化を指しています。重要なのは、これは細胞の見た目の変化であって、がん細胞そのものが増殖している状態ではないという点です。

■ 正常・異形成・がんの位置づけ

子宮頸がん検診の細胞診では、採取した細胞の形を顕微鏡で観察し、おおまかに次の3つの状態に分けて評価します。

異形成は、正常とがんのあいだに位置する「移行段階」であり、多くの場合、双方向に動きうる状態だとイメージすると理解しやすくなります。

正常細胞から異型細胞に変化してさらにがん細胞に変化を表した図

図1:正常な細胞と、がん細胞の間に異型細胞(異形成)という移行段階がある。異形成の多くは免疫の働きで正常な状態へ戻り、がんへ進むのはそのうちの一部に限られる

状態

細胞の様子

がん化の有無

基本的な対応

正常(NILM)

細胞の形にほぼ異常がない

なし

定期検診の継続

異形成(前がん病変)

細胞の形・核の大きさに変化がある

なし(がんではない)

程度に応じた経過観察または治療

がん(悪性腫瘍)

がん細胞そのものが確認される

あり

がんとしての専門的治療

2. なぜ起こる?原因はHPV感染

子宮頸部異形成のほとんどは、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの持続感染がきっかけで起こります。

HPVは性交渉によって感染するウイルスで、特別な人だけがかかるものではなく、性交渉の経験がある女性であれば誰でも一度は感染する可能性がある、ごくありふれたウイルスです。感染したこと自体を過度に気に病む必要はありません。

■ 感染しても多くは自然に排除される

子宮頸部の粘膜には、樹状細胞をはじめとする免疫の見張り役が常に配置されており、ウイルスに感染した細胞を見つけると、他の免疫細胞と連携してこれを排除しようとします。

HPVに感染した女性の多くは、1〜2年程度でこのウイルスを自分の免疫の力で排除できるとされ、それに伴って異形成も自然に消えていくことが少なくありません。

一方で、何らかの理由でウイルスが排除されずに感染が長引く(持続感染する)と、細胞の変化が進み、異形成の程度が強くなっていくことがあります。

■ パートナーへの感染はうつる?

HPVは非常にありふれたウイルスであるため、パートナーとの間で行き来している可能性は否定できません。ただし、感染していても多くの場合は無症状かつ一過性で、パートナー自身の健康に大きな影響を与えることは多くありません。

コンドームの使用は感染リスクを下げる助けになりますが、皮膚の接触でも感染しうるため完全には防げない点も知っておくとよいでしょう。

3.軽度・中等度・高度の違い  CIN分類を図で理解する

異形成は、異常な細胞が子宮頸部の粘膜(上皮)のどのくらいの深さまで広がっているかによって、軽度・中等度・高度の3段階に分けられます。

組織を採取して調べる検査(組織診)ではこの分類をCIN(Cervical Intraepithelial Neoplasia:子宮頸部上皮内腫瘍)という名称を使い、CIN1・CIN2・CIN3と表記します。

用語の整理:LSIL/HSILとCIN1〜3の違い

検診で行う「細胞診」の判定にはLSIL(軽度)・HSIL(中等度〜高度)という表記が使われ、精密検査である「組織診」の診断にはCIN1・CIN2・CIN3という表記が使われます。同じ「異形成」を指していても、検査の種類によって呼び方が異なる点に注意してください。正確な段階を確定するには、コルポスコピーによる組織診が必要です。

■ 上皮のどこまで異常細胞が広がっているか(断面図)

CIN1〜3の進展の病理図

図2:CIN1〜3は、異常細胞の広がりが基底膜の内側(上皮の中)にとどまっている点が共通している。基底膜を越えて間質へ広がると「浸潤がん」と呼ばれ、扱いが大きく変わる。

 

CIN1(軽度異形成)

CIN2(中等度異形成)

CIN3(高度異形成〜上皮内がん)

異型細胞の広がり

上皮の下1/3以内

上皮の下2/3以内

上皮の2/3〜全層

1〜2年での自然消失率の目安

約60%

約50%

治療が前提のため限定的

1〜2年での進行率の目安

約10%

約20%

(無治療放置時に長期でリスクあり)

基本方針

経過観察

経過観察(遷延時は治療も検討)

治療を検討

 ■ 自然消失率と進行率の図(CIN1・CIN2・CIN3)

CIN1・CIN2はいずれも、進行するより自然に消える割合を示した図

図3:CIN1・CIN2はいずれも、進行するより自然に消える割合の方が高い傾向にある。(青:1〜2年以内の自然消失率/赤:同期間での進行率)出典:Tainio K, et al. BMJ. 2018;360:k499/Ostor AG. Int J Gynecol Pathol. 1993;12(2):186-192 をもとに数値を要約して作成

4. 高度異形成(CIN3)で特に注意したいこと

CIN3(高度異形成〜上皮内がん)は、異常細胞が上皮のほぼ全層に広がった状態です。ただしCIN3もあくまで基底膜の内側にとどまっている段階であり、まだがんそのものではありません。CIN1・CIN2に比べて自然に消える割合は低く、経過観察だけで済ませることは少なく、治療が検討されるのが一般的です。

 

⚠️CIN3を無治療のまま放置した場合のリスク

約30%  CIN3を治療せずに長期間放置した場合、浸潤がん(本当のがん)へ進行するリスクの目安

(McCredie MR, et al. Lancet Oncol. 2008;9(5):425-434/約30年間の追跡データに基づく)

逆に言えば、CIN3の段階で適切に治療を受ければ、がんへの進行はほとんどの場合防ぐことができます。浸潤がんにまで進んでしまうと、標準治療は「広汎子宮全摘術+骨盤リンパ節郭清」となり、婦人科がんの手術の中でも体への負担や後遺症が大きくなりやすいとされています。定期的な検診と、指示された間隔での経過観察・治療がもっとも確実な予防策です。

 ■ 「高度異形成」と「上皮内がん」はどう違う?

CIN3という分類には、「高度異形成(Severe dysplasia)」と「上皮内がん(Carcinoma in situ, CIS)」の2つが含まれています。かつては別々に扱われていましたが、どちらも基底膜を越えていない点で挙動が似ており、治療方針もほぼ同じであるため、現在は臨床上まとめてCIN3として扱われています。

5. 検査・診断はどのように行う?

異形成の有無や程度は、段階を踏んだ検査によって明らかにしていきます。最初の検診(細胞診)で「異常あり」と判定された場合に、確定診断のための精密検査へと進みます。

細胞診で異常があ査ればコルポスコピーと組織診による精密検が必要になる。

図4:確定診断は細胞診だけでは行えず、コルポスコピーと組織診による精密検査が必要になる。(緑:CIN1・CIN2は経過観察へ/赤:CIN3・遷延するCIN2は治療へ

組織診は、子宮頸部の一部を米粒よりも小さく採取し、基底膜からどのくらい異型細胞が広がっているかを顕微鏡で確認する検査です。痛みへの配慮をしながら短時間で行うことができ、当院での所要時間は5分程度です。麻酔の状況や出血の程度には個人差があるため、当日の過ごし方については事前に説明を受けておくと安心です。

6. 治療は必要?経過観察と治療の判断基準

■ CIN1・CIN2(軽度〜中等度)の場合

自然に消える可能性が一定以上あるため、多くの場合は3〜5か月ごとの細胞診・コルポスコピーによる経過観察が基本方針となります。

すぐに切除などの治療を行うのではなく、体の免疫がウイルスを排除できるかどうかを一定期間見守るという考え方です。経過観察中に病変が悪化する、あるいは長期間(一般的には1〜2年以上)改善が見られない場合には、レーザー治療への切り替えを検討します。

▶ 「子宮頸部異形成のレーザー治療」についてのページもあわせてご覧ください。

■ CIN3(高度異形成〜上皮内がん)の場合

自然消失を期待して経過観察のみで様子を見ることは少なく、多くの場合は治療が検討されます。

代表的な治療法には、病変を円錐状に切除する「円錐切除術」、高周波電流で切除する「LEEP」などがあり、病変の広がりや今後の妊娠希望の有無に応じて方法が選択されます。組織を採取して調べられる円錐切除術・LEEPは、切除した組織で診断を再確認できるという利点もあります。

治療方法の詳細について

7. 妊娠・出産への影響は?

異形成があるというだけで妊娠・出産そのものが難しくなることは、基本的にはありません。多くの方は経過観察を続けながら問題なく妊娠・出産を迎えています。

一方で、円錐切除術などで頸部の組織を切除した場合には、頸管の長さが短くなることによって早産のリスクがやや高まるとの報告があります。妊娠中に異形成を指摘された場合は、総合病院産婦人科での妊婦健診をお勧めいたします。

8. よくある質問

Q. 子宮頸部異形成はがんになりますか?

A. 異形成そのものはがんではありません。多くは自然に消えるか、進行しても軽度〜中等度にとどまります。高度異形成(CIN3)を治療せずに放置した場合に限り、長期的にがんへ進む可能性があるため、程度に応じた経過観察や治療で進行を防ぎます。

Q. 症状はありますか?

A. 異形成の段階ではほとんど自覚症状がなく、多くは検診で偶然見つかります。不正出血やおりものの変化が出るのは、がんまで進行してからのことが一般的です。

Q. 経過観察はどのくらいの頻度で通院しますか?

A. 一般的には3〜6か月ごとに細胞診やコルポスコピーで経過を確認します。頻度は病変の程度や施設の方針によって異なるため、担当医の指示に従ってください。

Q. 異形成は自然に治りますか?

A. CIN1では約60%、CIN2では約40〜50%が1〜2年程度で自然に消えるとされています。免疫がHPVを排除できるかどうかが分かれ目になります。

Q. パートナーにうつりますか?予防できますか?

A. 原因のHPVは性交渉でうつるごくありふれたウイルスで、パートナー間で行き来することがあります。コンドームの使用やHPVワクチン接種はリスクを下げる助けになります。

Q. HPVワクチンは異形成の治療にも効果がありますか?

A. HPVワクチンは感染の予防が目的であり、すでにできている異形成を治す効果は証明されていません。ただし治療後の再発リスクを下げる可能性が報告されており、未接種の方は検討する価値があります。

Q. 妊娠中に異形成と言われたら?

A. 妊娠中でも多くは経過観察で対応可能です。治療が必要かどうか、いつ行うかは、出産予定や病変の程度に応じて担当医と相談しながら決めていきます。

参考資料

  • Ostor AG. Natural history of cervical intraepithelial neoplasia: a critical review. Int J Gynecol Pathol. 1993;12(2):186-192.

  • Tainio K, Athanasiou A, Tikkinen KAO, et al. Clinical course of untreated cervical intraepithelial neoplasia grade 2 under active surveillance: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2018;360:k499.

  • McCredie MR, Sharples KJ, Paul C, et al. Natural history of cervical neoplasia and risk of invasive cancer in women with cervical intraepithelial neoplasia 3: a retrospective cohort study. Lancet Oncol. 2008;9(5):425-434.

  • 日本産科婦人科学会・日本婦人科腫瘍学会「子宮頸がん治療ガイドライン」

  • 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん」

この記事の執筆・監修

入江 琢也   

アイレディースクリニック新横浜 院長

医学博士(慶應義塾大学)/日本産科婦人科学会 専門医/日本臨床細胞学会 細胞診専門医

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