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LSILとは|がんではありません。自然消退と精密検査

最終更新日2026年8月4日

LSIL(軽度扁平上皮内病変)と言われたら

子宮頸がん検診の結果に「LSIL」という見慣れないアルファベットが並んでいて、不安な気持ちでこのページにたどり着かれた方が多いと思います。

最初にお伝えします。LSILはがんではありません。そして、その多くは治療をしなくても自然に消えていきます。

ただし「自然に治ることが多い」と「何もしなくてよい」は違います。この2つの違いを、婦人科腫瘍を専門としてきた院長が、できるだけ噛みくだいてご説明します。

☝️このページの結論(60秒まとめ)

  1.  LSIL(エルーシル)=軽度扁平上皮内病変。子宮頸がん検診(細胞診)の判定区分のひとつです。
  2.  がんではありません。HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染にともなう、軽い細胞の変化です。
  3. 組織検査では「軽度異形成(CIN1)」に相当することが多く、CIN1の約60%は2年以内に自然に消えます。
  4. ただし細胞診はあくまで「推定」。LSILの中に、より進んだ病変が隠れていることがあります。
  5. だからこそ、コルポスコピー(腟拡大鏡診)+組織診で一度きちんと確認することが必要です。
  6. 確認さえできれば、多くの方は治療ではなく「定期的に見ていく」だけで済みます。

LSILとは?──60秒でわかる要点

LSILは Low-grade Squamous Intraepithelial Lesion の略で、日本語では「軽度扁平上皮内病変」と訳します。院内では「エルーシル」と読んでいます。

子宮頸がん検診では、子宮の入り口(子宮頸部)の細胞をブラシでこすり取り、顕微鏡で形を見ます。これが細胞診です。その結果を世界共通の様式(ベセスダシステム)で分類したときの、ひとつの区分がLSILです。

「病変」という言葉が強く響くかもしれませんが、医学用語としては“細胞に変化がある状態”という意味であり、腫瘍やがんを指す言葉ではありません。

以前の「クラスIIIa」との関係

お手元の結果票に「クラスIIIa」と書かれている方もいらっしゃいます。これは古い分類(日母分類)での表記で、現在のLSIL(軽度異形成の疑い)とほぼ同じ範囲を指します。

LSILは「がん」ですか?

いいえ、がんではありません。また「がんの一歩手前」でもありません。

子宮頸がんは、HPV感染 → 軽度異形成(CIN1) → 中等度異形成(CIN2) → 高度異形成・上皮内がん(CIN3) → 浸潤がん、という長い階段を、通常は数年もかけて進展していきます。LSILが示すのは、その一番下の段にあたる変化です。

検診結果ごとの位置づけを整理すると、次のようになります。

検診結果

推定される状態

次のステップ

NILM

異常なし

定期検診(2年に1回)を継続

ASC-US

正常か軽度異形成か判断がつかないグレーゾーン

まずHPV検査。

陽性ならコルポスコピー+組織診

LSIL

軽度異形成(CIN1)が疑われる

コルポスコピー+組織診で状態を確認

ASC-H

高度病変を否定できない

コルポスコピー+組織診

HSIL

中等度〜高度異形成(CIN2/CIN3)が疑われる

コルポスコピー+組織診で確定診断し治療方針を決定

AGC

腺細胞の異常

組織診・子宮内膜細胞診など追加検査

SCC等

がんが疑われる

ただちに精密検査

※ NILM以外は、精密検査で確認します。

それでも精密検査が必要な理由

細胞診は、剥がれ落ちた細胞の形から状態を「推定」する検査です。実際の病変の広がりや深さまでは分かりません。

そのため、LSILと判定された方を組織診まで進めると、実際には正常だった方もいれば、逆にCIN2以上の病変が見つかる方もいらっしゃいます。この“取りこぼし”を防ぐことも、精密検査の目的です。

なぜLSILになるのですか?──HPVとの関係

LSILのほぼすべては、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によって起こります。

HPVは、性交渉の経験がある女性の約8割が生涯に一度は感染するといわれる、ごくありふれたウイルスです。感染は不潔さや性行動の多さの証明ではありませんし、パートナーが一人であっても起こります。

感染しても、ほとんどの方は免疫の力で2年以内にHPVは自然に排除されます。

注意が必要なのは「持続感染」

問題になるのは、排除されずに感染が続く場合です。日本人女性では、とくにハイリスク型と呼ばれるHPV16・18・31・33・35・45・52・58型が持続すると、異形成が進みやすいことが分かっています。

つまり大切なのは「感染したかどうか」ではなく、「持続していないかどうかを見届けること」です。

LSILは自然に治りますか?

はい。多くは自然に治ります。

組織診で軽度異形成(CIN1)と確定した場合の経過は、次のように報告されています。

経過

割合の目安

2年以内に自然に消える

約60%

5年以内にCIN2・CIN3へ進む

約10%

浸潤がんに至る

まれ(通常はCIN3を経て長い年月をかけて進行)

HPVの「型」で見通しが変わります

国内の多施設共同研究では、CIN1が5年以内にCIN3へ進む割合は、HPV16・18・31・33・35・45・52・58型のいずれかが陽性の場合は約16.6%、これらが陰性の場合は約3.3%と、5倍前後の差があると報告されています。

同じ「CIN1」でも、見通しは一律ではありません。だからこそ当院では、必要な方にHPVタイピング検査(型を調べる検査)をご提案し、通院間隔を一人ひとりに合わせて決めています。

自然消退を後押しするためにできること

  • 禁煙:喫煙はHPVの排除を妨げ、病変が持続しやすくなることが知られています。LSILと言われたことをきっかけに、禁煙を強くおすすめします。
  • 決められた時期に受診を続けること。これが最も確実な方法です。

LSILと言われたら、次に受ける検査は?

LSILの方は、コルポスコピー(腟拡大鏡診)+狙い組織診に進みます。

ASC-USの場合はまずHPV検査で振り分けを行いますが、LSILは軽度異形成が疑われている段階のため、HPV検査を挟まずに直接この精密検査を行うのが標準です。

コルポスコピー検査とは(組織検査とも言います)

  1. 子宮の入り口を拡大鏡で観察します。

  2. 酢酸を塗ると、異形成のある部分だけが白く浮かび上がります。

  3. その部分から米粒ほどの組織を採取し(狙い組織診)、顕微鏡で診断をつけます。

痛み・時間・費用

項目      

内容

痛み

拡大鏡での観察と酢酸の塗布に痛みはありません。組織を採取する瞬間にチクッとした痛みや生理痛のような感覚がありますが、一瞬で終わります。麻酔は不要です。

所要時間

検査全体で5分程度です。

費用

保険適用(3割負担)で、コルポスコピーと組織診を合わせて5,000円前後が目安です。

検査後

数日〜1週間ほど少量の出血が続くことがあります。その間は入浴(湯船)・性交渉をお控えください。

結果

約2週間で判明します。結果は必ずご来院のうえ、画像をお見せしながらご説明します。

※ 月経中は検査を避けてください。妊娠中の方の子宮頸部の検査は当院では行っておりませんので、妊婦健診のかかりつけ医にご相談ください。

組織診でCIN1(軽度異形成)と確定したら?

CIN1は、原則として治療をせず経過観察を行います。これは国内外のガイドラインで一致した方針です。

通院の間隔は、次のようにしておます。

状況

推奨される受診間隔

CIN1と判明してから1年以内    

4か月ごとに細胞診(必要に応じて組織検査)

CIN1と判明してから1年以上

5〜6か月ごとに細胞診(必要に応じて組織検査)

⚠️ いちばんのリスクは「途中で経過観察をやめること」

  • CIN1そのものは、決して怖い状態ではありません。
  • 私たちが本当に心配しているのは、「軽いと言われたから」と通院が途切れ、数年後に進んだ状態で見つかるケースです。
  • 実際、進行した子宮頸がんで見つかる方の多くは、検診や経過観察から離れてしまった方です。
  • 半年に一度、5分の検査。それだけで、この病気はほぼ確実に手前で止められます。

LSIL・CIN1でレーザーや円錐切除は必要ですか?

いいえ。CIN1は原則として治療の対象ではありません。

CIN1に対して治療を推奨しているものはありません。

日本のガイドラインでは、CIN2も基本的には経過観察(症例によって治療を容認)、CIN3が治療の対象と整理されています。

外的に治療を検討する場合

  • CIN1が2年以上持続し、ハイリスク型HPVの感染も続いている場合は経過観察だけではなくもう一つの選択肢としてCO2レーザー治療を行っております。

当院で行っているCO₂レーザー蒸散術

当院では、治療が必要と判断された方に対し、日帰りのCO₂レーザー蒸散術を行っています。円錐切除術と異なり子宮頸管の形をほぼ温存できるため、将来の妊娠・出産への影響(早産リスクなど)を抑えられるのが利点です。

HPVは頸部の腺の落ち込み(腺陰窩)にも入り込むため、蒸散は表面を焼くだけでは足りず、5mmの深さまで確実に到達させる必要があります。当院ではこの深度を厳守し、再発を抑えることを重視しています。

ただし繰り返しますが、「LSILと言われたからレーザー」ではありません。まず正しく診断すること。治療の話は、その後です。

子宮頸部異形成レーザー治療について詳しくはこちら

レーザー治療後のHPVワクチン接種は再発予防に役立ちます

生活・妊娠・パートナーについてのご不安

Q. 性行為はしても大丈夫ですか?

日常的な制限はありません。ただし組織診の後、出血が落ち着くまで(およそ3日間)はお控えください。

Q. パートナーにうつしてしまいますか?

LSILという状態そのものが「うつる病気」ではありません。原因となるHPVは非常にありふれたウイルスで、多くの成人がすでに感染と排除を経験しています。どちらかを責める必要はまったくありません。パートナーの方に検査や治療が必要になることも、通常はありません。

Q. 妊娠・出産に影響しますか?

CIN1の段階で妊活を遅らせる必要はまったくありません。経過観察は妊娠中も継続できます。将来の妊娠を考えている方こそ、頸管を温存できる段階で状態を把握しておくことに意味があります。

Q. 今からHPVワクチンを打つ意味はありますか?

すでに感染している型には効果がありませんが、まだ感染していない型を防ぐ効果は期待できます。また、治療を受けた方の再発予防に有用であるという報告もあります。当院ではキャッチアップ接種にも対応しています。

当院のLSIL精密検査(費用・時間・受診方法)

  • 人間ドック・横浜市の検診結果票(LSIL等)をお持ちください。当院で受けた検診でなくても精密検査を行います。

  • 予約は不要です(土曜日の初診のみお電話でご予約ください)。

  • コルポスコピー・組織診は、すべて院長が担当します。

  • 治療が必要になった場合も、CO₂レーザー蒸散術まで当院で完結できます。円錐切除など入院を要する治療が必要な場合は、連携医療機関へ速やかにご紹介します。

LSILによくある質問(FAQ)

Q. LSILはがんですか?

A. いいえ、がんではありません。HPV感染にともなう軽い細胞の変化で、組織検査では軽度異形成(CIN1)に相当することが多い状態です。

Q. LSILは放っておいても自然に治りますか?

A. CIN1の約60%は2年以内に自然に消えます。ただし約10%は5年以内にCIN2・CIN3へ進むため、「放置」ではなく「経過観察」が必要です。

Q. LSILと言われたら、次に何をすればよいですか?

A. コルポスコピー(腟拡大鏡診)と狙い組織診を受けてください。LSILは細胞診結果で、細胞診は推定検査のため、組織を調べて確定診断をつける必要があります。

Q. LSILとASC-USはどう違いますか?

A. ASC-USは正常か異形成か判断がつかないグレーゾーンで、まずHPV検査を行います。LSILは軽度異形成が疑われる状態で、HPV検査を挟まず直接コルポスコピーと組織診に進みます。

Q. LSILで手術やレーザー治療は必要ですか?

A. 原則として不要です。CIN1は治療せず経過観察するのが国内外共通の方針で、治療を検討するのは病変が2年以上持続する場合やCIN2以上に進んだ場合です。

Q. LSILと言われましたが、妊娠しても大丈夫ですか?

A. 問題ありません。CIN1で妊娠をあきらめる必要はなく、経過観察は妊娠中も続けられます。(当院では経過観察できませんので、病院へ紹介をします)

Q. 精密検査は痛いですか?費用はいくらですか?

A. 観察と酢酸塗布に痛みはなく、組織採取の瞬間にチクッとする程度です。麻酔は不要で5分程度、費用は保険3割負担で5,000円前後が目安です。

 

参考資料

  • 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会『産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編』CQ203/CQ204/CQ205

  • ベセスダシステム2001準拠 子宮頸部細胞診報告様式

  • 子宮頸癌取扱い規約

  • CIN1/2の自然経過とHPVタイピングに関する国内多施設共同コホート研究

この記事の執筆・監修

入江 琢也   

アイレディースクリニック新横浜 院長

医学博士(慶應義塾大学)/日本産科婦人科学会 専門医/日本臨床細胞学会 細胞診専門医

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午前××
午後××
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